良心をもたない人たち―25人に1人という恐怖
良心をもたない人たち―25人に1人という恐怖Martha Stout

おすすめ平均
starsひどい‥
stars前向きになれる本
stars本当の恐怖は、その存在そのものを認識できないこと
stars「優秀なサイコパスはどんな相手の琴線にも触れることが出来る」
starsタイトルの象徴

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皮肉なことに、善良でやさしい人ほど(略)自分たちも特殊な状況に置かれたら、大量殺人を犯すかもしれないと考える。だれにも少しばかりかげの部分があると考えるほうが、一部の人間だけが常に道徳の闇の部分に生きていると考えるよりも、民主的で人を糾弾するような感じが薄らぐ(不穏当なところも少ない)気がするのだ。

良心なき人びとにたいして行動を起こすためには、まず彼らを見分ける必要がある(略)最高の目安になるのは、おそらく、“泣き落とし”だと。もっとも頼りになるヒント、平気で悪事をする人びとのあいだでもっとも普遍的な行動は、ふつうの人が予想するように、私たちの恐怖心に訴えるものではない。私たちの同情心に訴えるものなのだ。

研究の多くで、<ミネソタ多面的性格検査表(MMPI)>の中の「サイコパス的逸脱(Pd)」測定が取り入れられたのだ(略)Pd測定で一卵性双生児の結果がおなじになる確率は二卵性双生児の二倍以上で、「サイコパス的逸脱」については、少なくともあるていどの遺伝的影響があることが強く示唆された。

1995年に、サイコパス的特徴の有無を個人追跡法で大がかりに縦断調査した結果が出版された。ベトナム戦争でアメリカ軍兵士として軍務についた人の名簿の中から探し出した3226組の男性の双生児を対象にしたものだ。(略)8種類のサイコパス的特徴の有無が、かなり遺伝的であることがわかった。

すでに30年以上活動しているテキサス里親プロジェクトは500人をこえる里子について個人追跡調査を行った(略)子どもは育ててもらった両親より、実際には会ったことのない母親と強い共通点があった。この研究では、遺伝率は54パーセントと推測された。

サイコパスの被験者は、感情的な言葉をもとにした意思決定テストを与えられたとき、ほかの被験者にくらべて、側頭葉への血流量が増加した(略)それらを総合して、サイコパシーでは大脳皮質のレベルで、感情的な刺激に対して変性処理が行われていることが判る。(略)サイコパスに良心が欠如しているだけでも悲劇的なのに、それだけではない。彼らは愛ややさしさといった感情的体験を受け止めることができないのだ。

サイコパシーの基本的特徴である良心の欠如を、幼児期に受けた虐待と結び付けられるような、説得力のある調査結果はない。そしてサイコパス全体に、鬱病や慢性不安などの、幼児虐待による悲劇的な影響は出ていない。いっぽう、これまでの研究結果の累積から、幼児期に虐待を受けた者は、違法行為をしていようといまいと、そうした影響に苦しめられることがわかっている(略)言い換えると、だれにも想像がつくように、劣悪な環境が犯罪行動を加速させているわけだが、サイコパスの場合は、犯罪行動が独自の時刻表に従って自然に花開くようなのだ
(略)
幼児期の虐待も愛着障害も、サイコパスを作り出す背景とは考えにくい

良心のない人に対処する13のルール
(略)
1.世の中には文字通り良心のない人たちもいるという、苦い薬を飲み込むこと。
(略)
8.サイコパスから身を守る最良の方法は、相手を避けること、いかなる種類の連絡も絶つこと
(略)その行動は誰も傷つけない。傷ついたふりはするかもしれないが、サイコパスに傷つくという感情は無いのだ。
10.治らないものを、治そうとしないこと。
(略)サイコパスのとった行動は、あなたの落ち度ではない。あなたの責任でもない

一般的に彼らは努力を続けることや、組織的に計画された仕事はいやがる。現実世界で手っ取り早い成功を好み、自分のすることを極めて制限する。毎朝早くから職場にかよって長時間働くことなど、ほとんど眼中にない(略)自分を不在がちな上司や凄腕の上司、あるいはたぐいまれな“ピリピリした天才”に見せかける。ひんぱんに休暇や休み時間をとるが、その間実際になにをしているかは謎である。(略)なにかに真剣に没頭することや、毎日訓練を重ねて美術や音楽その他の創造的な力を磨くことは、サイコパスには全く向いていない。

“良心を欠いた状態”については、はたしてそれが精神障害なのかという基本そのものもいまだにとらえがたく、なぜそのような人びとが生まれてくるのかも、はっきりと解明されていない。そこで名称自体も、精神病的な響きがあるという理由から精神病質は不適切であるとして、社会病質という言葉が同じ意味で使われるようになった。さらにその後、アメリカ精神医学会の分類マニュアルからはサイコパス、ソシオパスの名称がともに削られ、反社会性人格障害(APD)という名称に統一された。だが、反社会的人格障害という呼び名も、実際の病状も的確に表すものではないという議論もあり、現在ではこの3つの名称のどれを使うかは、診断者にまかされているようだ(略)名称の変遷ひとつとっても“良心なき人びと”を正確にとらえることのむずかしさがうかがえる。