「テクノロジー犯罪」と言っても、コンピュータウィルスでクレジットカードの暗証番号を抜かれるとかではなく、「電磁波・超音波を使っての遠隔攻撃。遠隔操作」等々の電波系。「最近では見知らぬ人や職場の同僚、メディアによるほのめかしを訴える被害者が増えてきました」だそうな。
どうもなんか「CIAが電波で私の思考を盗聴している」とか「階下に住んでる暴力団が電波で俺に嫌がらせをしてくる」とか「テレビや漫画などの作品の中に僕の私生活からネタをとって作ったと思われるものが多数見られるようになりました」とか、そういう恐るべき「犯罪」の被害者団体があるらしくて、加盟者がその被害体験を書いている。

パソコンのカーソルが元の位置から前の文章に飛ばされているのだ。
(略)
PC本体が突然発熱を生じ、電源をOFFにしないと収まらない。

(階上の足音等の雑音が)私が頭で考えたことに合わせて、実にタイミングよく発生するのである。これは私を24時間モニター監視していなければ決してできないことである。

外出時に同じ場所で同じ人と遭遇するようになる

某パチンコ店、ギャンブルなどの広告を見て「日本人カモろうとしてるんちゃううんか」と独り言を言うと、次の日トラックがカモを轢くというニュースが流れる(略)こんなことが延々と続いた。

等々恐怖の「犯罪(笑)」の数々が当事者の口から語られる。んで皆さん、内容もさることながら文章が妙でな…。書き出し時点では「私はこんな目に遭いました」的な文体なんだけど途中から、百科事典からの抜書きっぽい「電磁波(でんじは)は、空間の電場と磁場の変化によって形成された波(波動)のことである。電界と磁界がお互いの電磁誘導によって交互に相手を発生させあうことで(略)」文章が挟まったり、急に箇条書きの短文になったり、目を通すだに只者じゃない感じがひしひしと伝わってくる。
「電波」を遮断するために各自アレコレ工夫する人も居るんだが、その方法が何故かベッドの下にタライで水を張ったりプチプチシートを巻いたり独創的。普通は電波遮断と言えば、シールド線や電子レンジを見ればわかる通り金属で包むのが文字通り鉄板だが…。
中でも凄いエピソードが、「電波攻撃をやめろ!」と隣の家に包丁を持って怒鳴り込む。→女性と赤ちゃんの二人暮しだった。女性がパニックになって泣き喚く→誤解と判る→「某アーティストやその某作曲者に嵌められた!」との思いから家の玄関前で泣きながら殺してやる!殺してやる!と気が狂ったように(ように?)泣き叫ぶ
とかはた迷惑にも程がある。こえーよw。誤解とわかったところで、何故そこで「某アーティストの陰謀だった」に行くのか…。
絵に描いたような狂人なんだから、行くべき所は警察ではなく病院だ…と、読者は誰も思うだろうけれども、

世間からまだまだ統合失調症やうつ病の一種としてみなされてる

どんなに勧められても精神病院に入院しないことで攻撃は益々激しくなってきました。
入院してからはピリピリした痛みや他の痛みもほとんどなくなり
(略)
容赦のない攻撃は私を精神病院に入れるために必要だったということなのでしょう。

入院して治ってもそれか…何というか、病のため頭が余りにも固い…完全固化している。という訳で処置なし*1
探偵社に相談する人も多いらしく

「盗聴されている」という人の家を実際に調べ、「何も出てきませんでした」と結果を伝えても、「いや、盗聴器は絶対ある」と言い張り、調査料金を払ってくれなかったりするのです。僕らを家に呼んでおきながら、「お前も手下だろ」と包丁を振り回す人もいましたからね。

https://www.bengo4.com/other/n_6761/

とのこと。
ただ、本人的には本当に深刻に苦しんでいる様子がよく伝わってくるので、こういう妄執には取り憑かれたくないものである。

テクノロジー犯罪被害者による被害報告集―遠隔技術悪用を告発する33名の被害者自身による被害実態報告テクノロジー犯罪被害者による被害報告集―遠隔技術悪用を告発する33名の被害者自身による被害実態報告
内山治樹

講談社出版サービスセンター 2010-05
売り上げランキング : 262368

Amazonで詳しく見る