光市母子殺害事件を起こした稀代の極悪人・福田孝行*1の名を本文はもとよりタイトルに使った豪快さから弁護団から訴訟を起こされた*2という本。
 「無期はほぼキマリ、7年そこそこに地上に芽を出す」「犬がかわいい犬と出合った…そのまま『やっちゃった』…罪でしょうか」「赤ちゃんの遺体を押し入れの天袋に隠したのは、ドラえもんが何とかしてくれると思った」で有名な奴。極悪人の更生は不可能であることを如実に世間に訴え、また最高裁での荒唐無稽な言い訳で大弁護団含め死刑廃止論者の株を大いに下げた男だ。
 んで、この著者は死刑が決まってから群がってきた功名心強いライターの一人であることが取材先全員に見透かされてて、福田孝行の父、福田孝行の文通相手、福田孝行の一審の元担当弁護士、福田孝行の二審の元担当弁護士、福田孝行の現弁護士、福田孝行に妻子を殺された木村洋氏、全員に怒られたり取材拒否されたり。ただ福田孝行当人はとにかく女好きで女とみれば文通も面会も大好きだったので女の著者は割と頻繁に会えたようだが…。女は得だなw。
 内容はまぁ「死刑は当然だ」という内容では売れぬので、「父の育て方が悪い」「文通相手に煽られた」「弁護ミス」「マスコミ報道の問題」「死刑制度は駄目」という構成にしたかった…のは伝わってくるのだが、何せ上記のごとき俄かなので無理が…というか俄かでなくても無理だよな…。成育歴云々言っても、現代日本で一体どんな特殊訓練を詰めば自発的に斯様な悪行に及ぶ人間を作れるのか。文通や面会部分読んでも「恐ろしく我儘な悪人、しかも大馬鹿」にしか見えない。また地の文の筆致から著者自身も相当自分勝手な悪人であることが匂う。「私はジャーナリスト」がやりたかっただけの女。
 つか当人に散々面会と文通して結局、犯行動機を書けないとは呆れた筆者だね。
 巻末の今枝仁弁護士による解説、裁判での戦法や読みが一番面白い。最高裁が自ら死刑判決を言い渡さないで差し戻し審理を求めた意味は、重罰化の流れではなく特殊な事件故に事件後の事情を重視し、福田孝行の反省と被害者遺族の処罰感情の変化を見る目的だったのであり、態度次第では無期確定も充分在り得た所だが、ここでドラえもん魔界転生でやらかしちゃって遺族怒髪天でアウトだった、殺意を否定する一発逆転戦法は賭けだったが失敗した、と。尚、別件の極悪人・山地悠紀夫の件の被害者遺族は病床で「自分が先に逝くのが先か、山地の執行が先か」と言ってたそうで
 ちなみに死刑確定後も再審請求やら何やらで未だに処刑されていないようだ。法務省怠慢では。それにしても「君を殺して何になる」ってはてなキーワードになってるのねw。

福田君を殺して何になる福田君を殺して何になる
増田美智子

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*1:因みにこの本が出たから極悪人・福田孝行は日本基督教団の大月純子との養子縁組により苗字を変え、今では「大月孝行」と名乗っている。

*2:広島高等裁判所は2013年5月30日に「出版による権利侵害は認められない」として地裁判決を取り消す判決を出し、最高裁判所第1小法廷は2014年9月25日付で上告を棄却した。これにより広島高裁の判決が確定