「トラックに轢かれて死後の世界で活躍する話」は今や本邦の願望充足小説の一大ジャンルだが、その中でも「その死後の世界が嘗てプレイした乙女ゲームの中で、自分は悪役令嬢の立場」という、妙にピンポイントな設定が、サブジャンルを成す程に人気があるそうで、その一つ。
「転生」って凄くオカルトな現象なのに、その先が現代科学の結晶たる家庭用コンピュータゲームというのが何かなぁ、食い合わせが悪い気がするが、流行っているということはそうでもないのだろうか。これが書籍、「本の中の物語の世界」だと古代から続くその歴史の古さから何となくオカルトOKなんだけど。
「コンピュータゲームの中」と思うからいかんのか。宇宙空間の広さは無限大、対して半径460億光年の空間内に於ける素粒子の配置パターンは有限。寧ろ、任意の乙女ゲームに酷似した状況が展開される惑星の存在は必然とすら言える。ここはそういう場所なのだろう。
んで、乙女ゲームには疎いんだが悪役令嬢というのは多分、小公女でいうとラビニアみたいな人物だろう。死後の世界でモテモテ、ウハウハザブーン願望は判るが、何故悪役令嬢…ラビニア側に感情移入する優しい人が多いのか。
このサブジャンルが他の死後の世界モノと際立って違うのは、多分、主人公が先の展開を知っている事、そのまま漫然と暮らすと悲惨な死に方をするので先手を打って行かざるを得ない事ですな。チートポイントが「未来を知っている」なのは、よくある「何か閻魔大王役の女神様に素敵な魔力を授かる」よりはだいぶ説得力があるし、動機付けとしても悲惨な未来を避けるは実にいい。
恐らく、本来の乙女ゲームの自機にあたる主人公キャラが登場してからが本番なのだろうけど、まだそこまで話は進まず、果たして、昔からタイムトラベルテーマSFでおなじみの「歴史の慣性力」で何をしても破滅エンドに収束しようとする運命に抗う話になるのか、はたまた、これまた昔からタイムトラベルテーマSFでおなじみの「バタフライエフェクト」で彼女の未来知識からどんどん外れていくのかは不明。
ちなみに絵は綺麗。