著者がJames R.Flynn、IQのスコアが過去100年に渡り上昇を続けているフリン効果で有名なあのフリン名誉教授だ。
内容は統計をどう解釈するかの話。
知能テストも様々な種類があり時代により内容が変わるので比較は難しいようだ。
アメリカには、知能が低い犯罪者は重罪でも死刑は免れるという面白法律があるので、フリン効果により昔なら処刑を免れたであろう知障重罪人が処刑されてしまっているという割とクリティカルな話らしい。

人種や男女によるIQ差に関する話題は、世間から目の敵にされるので前著では取り上げなかった。知能に関する私の冷静な分析が激論の渦の中に埋もれてしまうのはいやだった。ハーンシュタインとマレーの著書The Bell Curveの世間での受け止められ方を見れば、それは一目瞭然だ。まるで本の内容の9割が人種にまつわる話題であるかのように取り上げられたのだ。実際はほぼ9割が人種以外のテーマだったというのに。
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ある認知課題に秀でている人は、他の認知課題にも秀でている傾向がある。そこで「g(一般知能因子)」という考えを据えた。ある下位検査の成績をもとに、認知課題全般でどれだけ高成績を上げるかを精確に予測できるものはg負荷量が高く、うまく予測できない下位検査はg負荷量が低い。ということは、WISCとWAISの10下位検査をg負荷量からの大きいモノから順にランキングできる。いちばん重要なのは、g負荷量のランキングが各下位検査の認知的複雑性のランキングと一致することである。
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認知課題が複雑になればなるほど、劣った集団は優れた集団にますます引き離されるのがふつうだ。これを踏まえると、集団間での問題解決能力の差をふたつに分けて考える事ができる。10下位検査に等しい重みづけをしたウェクスラー「IQ差」とg負荷量に応じて下位検査の成績に重みづけをしたウェクスラー「GQ差」だ。
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人種間におけるGQ差とIQ差のひらきは1ポイント程度である。
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アーサー・ジェンセンは次の様に論じた()3.人種間に遺伝的な違いがないと仮定すると、黒人は、白人の全人口のなかから劣悪な家庭環境に身を置く人をサンプル抽出したと考える事ができる。4.たとえば、IQが白人の中央値より1SD低い黒人は、家庭環境の良し悪しについては白人の中央値より3SD(1/.033=3)低くなる。5.すると、平均的な黒人の家庭環境は白人の下位0.2%以下になるが、そんなことはありえないだろう。6.この矛盾を解消するためには、すべての黒人の家庭環境を同じように悪化させるが、白人にはまったく影響を与えない「X因子」なる奇想天外な代物を据えるしかない。
私はフリン効果を使って、ジェンセンの鉄壁の論証を打ち崩した。
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結婚適齢期にある白人女性100人中86人が将来有望な配偶者、つまり健康で、前科がなく、過去12か月の間、少なくとも半日労働に就いている夫がいる。ヒスパニック系の白人女性になると、その割合は100人中96人と高くなる。()だが黒人女性になると、この割合は100人中57人となり、その半数近くは子供がいないか、または将来性のないパートナーとの間にできた子供がいる()黒人女性にとっては思わぬ落とし穴だった。異人種間結婚によって負け組になってしまったのだ。黒人以外の女性と結婚する黒人男性5人に対して、黒人以外の男性と結婚する黒人女性はわずか2人(flynn,2008)。黒人女性の結婚市場は、第二次世界大戦後のロシア女性より分の悪い状況である。
それにしてもベルカーブの紛糾は発達心理学者を相当ビビらせているようだ…。