安倍元総理の回顧録。
大昔の政治家や外国の政治家のではなく、かなり最近の日本首相の回顧録なので、出てくる事件がコロナとかトランプ大統領登場とかTPPとか天皇生前退位からの改元とか私も知っている話ばかりで面白かった。
元号、官邸幹部は「万和」推しだったけれど総理は「バ」の濁音が入っていて気に入らず、「英弘」は響きは良いが人名に使われる事が多くてイマイチ、「天翔」はいいな、と思ったけれど調べたら葬儀屋の社名に使われていて没、で令和になったそうな。ちなみに「安」の字だけは絶対入れるな、と指示していたとか、本当は元旦の改元が一番自然だと思っていたけれど元旦前後は皇室行事が立て込んでいると、畏き所から天の声が降ってきて取りやめたとか。
時系列ではなくてインタビュワーがトピック毎に話を振って元総理が答える形式なのでその辺も読み易い。
総理大臣の自伝なのに他の政治家やスピーチライター、秘書官の名前を挙げて褒める事が多く、佐伯秘書官と今井秘書官は良く出てくる。
あと消費税増税延期やら何やらで暗闘を繰り広げていた財務省とはまた別に、厚労省には年金納付記録漏れ、裁量労働制のデータがいい加減、毎月勤労統計の不適切な調査、新型コロナ対策での問題、と杜撰な仕事で足を引っ張り過ぎ、役人の質が低下しているとプリプリだった。
森友学園問題と加計学園問題にはめっちゃ反論しているけれど、桜を見る会については逆に招待基準が不明確で膨れ上がってしまったと平身低頭めっちゃお詫びしているな。
そもそも財務省とは仲が宜しくなかったようなので、こりゃとても財務省の役人が、総理の嫁のそのまた知人のために我が身の危険を顧みず土地を値引きしたり文書を改竄するとは思えない…。

安倍晋三 回顧録
尾山宏
中央公論新社
2023-02-08